働き方改革公開日:2020年10月5日 更新日:2020年10月27日

同一労働同一賃金とは?正社員と派遣等の格差解消を目指して

同一労働同一賃金の目的は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
そして同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。
▼同一労働同一賃金の概要のリーフレット
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なお「同一労働同一賃金」は政府のスローガンまたは呼称のようなものであり、正式には「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の禁止」といいます。

厚生労働省による「同一労働同一賃金」ガイドライン

不合理な待遇差の禁止については、「違いを考慮し」などの言葉から読み取れるように
解釈においてあいまいな部分があるので2016年12月20日にガイドライン案が示されました。
同一労働同一賃金ガイドライン
ガイドラインより、

  • ①職務の内容(業務の内容+責任の程度)
  • ②職務の内容・配置の変更の範囲等

で判断しますので、我が国の同一労働同一賃金は、同じ職務を遂行している者には同額の賃金を支払わなければならない、という性質のものではありません。

そのため、派遣労働者など非正規雇用者の割合が増えつつある日本において、日本版の「同一労働同一賃金」といった方が分かりやすいかもしれません。

同一労働同一賃金の考え方

上記ガイドラインが示したように、同一労働同一賃金では

  • ①職務の内容(業務の内容+責任の程度)
  • ②職務の内容・配置の変更の範囲等

以上が同一であれば、差別的な取り扱いは禁止されます。

差別的な取り扱いの禁止は、正社員と同じ待遇が求められるということ、正社員より不利益な取り扱いをしてはならないということを意味します。
①と②が同一で差別的な取り扱いをしているケースはほとんどないといわれています。理由は、正社員には配置転換・昇格昇進・幹部登用があり、非正規雇用労働者には配置転換・昇進・幹部登用が一般的に存在しないケースが多いためです。また、
①と②が同一でなくても、賃金の決定方法について
①職務の内容(業務の内容+責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲
③その他の事情(職務の成果、意欲・能力または経験など)
の3つの違いを考慮した上で、不合理な待遇差は禁止されます。
①から③の違いを考慮して不合理と認められる待遇差が禁止されるので、①から③の違いを考慮し不合理と認められるもの以外の待遇差(不合理と認められない待遇差)は禁止されないということを意味します。

同一労働同一賃金はいつから?

同一労働同一賃金は2020年の4月から始まります。ただし、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年の4月1日からです。関連法としては
パートタイム・有期雇用労働法:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行
労働者派遣法:2020年4月1日より施行

派遣労働者への同一労働同一賃金の適用

2020年4月1日から、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行されます。
先ほど示したように、改正労働者派遣法は中小企業の猶予措置はありませんので、中小企業を含めた全ての企業で来年4月1日に施行されます。よって、全ての企業で2020年4月1日までに対応し、実施する必要があります。
改正点は次の3点です。

  • 1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備
  • 2.派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
  • 3.裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

それぞれの改正内容をご確認の上、派遣で働く方の公正な待遇が確保されるよう、適切に対応してください。

派遣社員の同一労働同一賃金を実現は「同一労働同一賃金」の中心の施策主体は人材派遣会社です。人材派遣会社が一定の判断基準に基づいて賃金などの待遇を検討していくことになります。
その方式には(a)「派遣先均等・均衡方式」(b)「労使協定方式」の2種類があります。
具体的には、派遣元が次の(a)または(b)の待遇決定方式のいずれを選択するかにより対応が異なります。
  • (a)【派遣先均等・均衡方式】
    派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇(派遣先の労働者との均等・均衡を図る方式)
  • (b)【労使協定方式】
    一定の要件を満たす労使協定による待遇(同種業務に従事する一般労働者との均等・均衡を図る方式)
このブログをお読みの方が、派遣元の場合は、(a)または(b)のいずれを選択するのかを決定する必要があります。
派遣先の場合は、派遣元が(a)または(b)いずれを選択するのかについてまず確認する必要があります。
厚生労働省のHPにおいて、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けて特設ページが開設されています。随時パンフレットが掲載されていきますのでご活用ください。
派遣労働者の同一労働同一賃金について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html#h2_free4
▼派遣元の皆さまへ(厚生労働省)
PDFダウンロード
▼派遣先の皆さまへ(厚生労働省)
PDFダウンロード
▼平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>(厚生労働省)
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「同一労働同一賃金」実施のための支援ツール

厚生労働省では「正社員」と「パートタイム・有期雇用労働者」との待遇差解消に向けた支援するツールを公開しています。
同省では、同一労働同一賃金に関する特集ページをHP上に設け、企業の制度改正を支援するツール(「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」、「パートタイム・有期雇用労働法の解説動画」)などを順次公開しています。
同一労働同一賃金特集ページ
公開された支援ツールの主なものは以下のとおりです。
  • Ⅰ パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書
  • Ⅱ 不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル
  • Ⅲ 職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル
  • Ⅳ パートタイム・有期雇用労働法の解説動画
  • ※Ⅲでは、基本給に関する均等・均衡待遇の状況を確認し、等級制度や賃金制度を設計する1つの手法として、
    職務評価について解説されています。
    職務評価制度を導入していない会社では適合しないケースがありますのでご注意ください。

同一労働同一賃金取扱い手順

2020年4月1日より施行(中小企業は、2021年4月1日から適用)される、
同一労働同一賃金に関する取扱い手順書が厚生労働省より公開されました。
手順書に従い準備を進めましょう。
▼パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書(厚生労働省)
PDFダウンロード
手順書に記載されている手順を以下抜粋します。

【手順 1】労働者の雇用形態を確認しましょう P1~P6
法の対象となる労働者の有無をチェックします。社内で、短時間労働者や有期雇用労働者は雇用していますか?

【手順 2】待遇の状況を確認しましょう P6~P13
短時間労働者・有期雇用労働者の区分ごとに、賃金(賞与・手当を含む)や福利厚生などの待遇について、正社員と取扱いの違いがあるかどうか確認しましょう。
書き出して、整理してみるとわかりやすいでしょう。
【手順 3】待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認しましょう P6~P13
短時間労働者・有期雇用労働者と正社員とでは、働き方や役割などが異なるのであれば、それに応じて賃金(賞与・手当を含む)
や福利厚生などの待遇が異なることはあり得ます。
そこで、待遇の違いは、働き方や役割などの違いに見合った、「不合理ではない」ものと言えるか確認します。
なぜ、待遇の違いを設けているのか、それぞれの待遇ごとに改めて考え方を整理してみましょう。
【手順 4】手順2と3で、待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておきましょう
事業主は、労働者の待遇の内容・待遇の決定に際して考慮した事項、正社員との待遇差の内容やその理由について、労働者から説明を求められた場合には説明
することが義務付けられます。
短時間労働者・有期雇用労働者の社員タイプごとに、正社員との待遇に違いがある場合、その違いが「不合理ではない」と説明できるよう、整理しましょう。
労働者に説明する内容をあらかじめ文書に記してまとめておくと便利です。
【手順 5】「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指しましょう
短時間労働者・有期雇用労働者と、正社員との待遇の違いが、「不合理ではない」とは言いがたい場合は、改善に向けて検討を始めましょう。
また、「不合理ではない」と言える場合であっても、より望ましい雇用管理に向けて改善の必要はないか検討することもよいでしょう。
【手順 6】改善計画を立てて取り組みましょう
改善の必要がある場合は、労働者の意見も聴取しつつ、パートタイム・有期雇用労働法の施行までに、計画的に取り組みましょう。

パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書

不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル

パートタイム・有期雇用労働者等の数又は割合が高い業界(スーパーマーケット業、食品製造業、印刷業、自動車部品製造業、生活衛生業、福祉業、労働者派遣業)について、企業が円滑に取組を進めることができるよう、厚生労働省が業界別の「マニュアル」を作成しています。
また、上記7業界に加え、「業界共通編」も作成されています。
本マニュアルは、学識経験者のみならず、業界団体や労働組合関係者による検討を踏まえて作成しており、「働き方改革関連法」に沿って不合理な待遇差を解消し、雇用形態に関わらない公正な待遇を実現するための考え方と具体的な点検・検討手順を詳細に解説していますので、是非、ご活用下さい。
不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)(厚生労働省)

派遣労働者の同一労働同一賃金に関するQ&A

厚生労働省が、派遣労働者の同一労働同一賃金について、「労使協定方式に関するQ&A【第2集】」を公開しました。
これは、本年8月の「労使協定方式に関するQ&A」に続くもので、実務上の様々な疑義についてQ&A方式で説明しています。
▼労使協定方式に関するQ&A【第2集】(厚生労働省)
PDFダウンロード
▼労使協定方式に関するQ&A(厚生労働省)
PDFダウンロード

同一労働同一賃金にまつわる判例

同一労働同一賃金が開始されて間もないため、直接の裁判ではありませんが、以前の裁判の中にその意図を組んだ判例が示されており、そのいくつかをご紹介します。

判例①アルバイトへの賞与・休職給の不支給は不合理と判断されました

薬科大学の元アルバイト職員の50代女性(適応障害により長期休職後に退職)が、賃金・休暇等に関する正社員との待遇格差が労働契約法20条に違反するとして、約1,272万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が大阪高等裁判所でありました。

大阪高等裁判所は賞与や私傷病休職中の賃金等について一部の格差を違法と認めて、大学側に約109万円の支払いを命じました。
正職員の賞与は「個人成績や法人業績に一切連動していない」ため、「算定期間に就業していたことそれ自体に対する対価」としての性質を有すると判断し、新卒正職員の60%を下回る場合、不合理な労働条件の相違に当たるという基準を示しました。
判決理由で裁判所は、大学の賞与額が個人成績や法人業績ではなく基本給に連動し、
就労自体への対価の趣旨を含む点を踏まえ「(月給制で正職員より労働時間が短い)有期契約職員に対しては、正職員の約8割の賞与があるが、アルバイト職員に全くないのは不合理である」と指摘し、本来なら約6割分が支給されるべきで、これを下回るのは不合理と判断しました。
私傷病休職の場合、正職員には6カ月の賃金を全額保証し、その後もおよそ2割の休職給を支払うといった措置が講じられていましたが、アルバイトは無給でした。
裁判所は「契約を更新し、習熟度を高めた職員は一般に代替性が高いといえず、生活保障の必要性を否定しがたい」という理由で、一部を支払うよう求めました。
一方、基本給については、能力に差があるなどと指摘し、慰謝料の請求についても退けました。

判例②契約社員へ退職金不支給は不合理と判断されました

株式会社メトロコマースの元契約社員ら4人が正社員との労働条件の差を不合理として訴えた裁判の控訴審で、東京高等裁判所は一審判決を変更し、退職金の一部など計220万円の支払いを命じました。退職金には功労報償的な性格が含まれるとして、長期勤務者に一切支払っていないのは不合理と判断し、正社員の退職金規程に当てはめ算定した額の4分の1の支払いを命令しました。

株式会社メトロコマース(東京メトロの子会社)の有期契約社員として駅の売店で販売員をしていた女性4人(64~71歳)が、正社員と有期契約社員との間に不合理な待遇格差があるとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁でありました。
裁判所は「長期間勤務した有期契約社員に退職金を全く支給しないのは不合理」とし、4人のうち2人に退職金45万~49万円を支払うよう命じました。
原告の2人の勤続年数が10年前後に渡っていたことから、「退職金のうち、長年の勤務に対する功労報償の性格をもつ部分すら支給しないのは不合理だ」と裁判長は述べ、「退職金の金額は正社員と同じ基準で算定した額の少なくとも4分の1と判断しました。
住宅手当に関しても、生活費補助の側面があり、職務内容によって必要性に差異はないと指摘し、3人に対して11万~55万円の支払いを命じました。
一方、正社員とは配置転換の有無などの労働条件が異なるとして、賃金や賞与などの格差は容認しました。
4人は2004~06年に採用され、3人は既に定年退職しました。
4人のうち1人は、正社員と非正規との不合理な格差を禁じた改正労働契約法の施行前に、
定年によって雇用形態が変わったため、東京高裁は一審同様に請求を退けました。