特定の職種に限って働く原告に対し、使用者が別の職種への配置転換を命じられるかについて争われた訴訟の最高裁での判断が示されました。
事件の概要は次のとおりです。
原告は滋賀県の社会福祉協議会が運営する福祉施設で、福祉用具などを改造する技師として約18年間勤務しました。
施設では福祉用具の改造業務の受注が減ったことから当該業務を廃止する方針であり、さらに原告の異動先として示した総務課は退職による欠員が生じていた事業を考慮し、施設側は2019年、事前に打診することなく総務課に配置転換する人事異動を内示しました。
原告は労働契約で職種を限定している以上、本人の同意なく職種を変えることは許されないと訴えた、という流れです。
一審の京都地裁、二審の大阪高裁は職種限定の合意があったとした上で、配転命令には解雇を回避する目的もあり、異動には合理的な理由があるとして原告の請求を退けました。
最高裁は下級審の判断について「明らかな法令違反がある」と判断をしました。
裁判所HPにおいて、その判決文のダウンロードが可能です。
【PDF】令和5年(受)第604号 損害賠償等請求事件 令和6年4月26日 第二小法廷判決(裁判所)
※最重要部分につき以下転載をします。
事件の概要は次のとおりです。
原告は滋賀県の社会福祉協議会が運営する福祉施設で、福祉用具などを改造する技師として約18年間勤務しました。
施設では福祉用具の改造業務の受注が減ったことから当該業務を廃止する方針であり、さらに原告の異動先として示した総務課は退職による欠員が生じていた事業を考慮し、施設側は2019年、事前に打診することなく総務課に配置転換する人事異動を内示しました。
原告は労働契約で職種を限定している以上、本人の同意なく職種を変えることは許されないと訴えた、という流れです。
一審の京都地裁、二審の大阪高裁は職種限定の合意があったとした上で、配転命令には解雇を回避する目的もあり、異動には合理的な理由があるとして原告の請求を退けました。
最高裁は下級審の判断について「明らかな法令違反がある」と判断をしました。
裁判所HPにおいて、その判決文のダウンロードが可能です。
【PDF】令和5年(受)第604号 損害賠償等請求事件 令和6年4月26日 第二小法廷判決(裁判所)
※最重要部分につき以下転載をします。
労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には、
使用者は、当該労働者に対し、その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しないと解される。
上記事実関係等によれば、上告人と被上告人との間には、上告人の職種及び業務内容を本件業務に係る
技術職に限定する旨の本件合意があったというのであるから、被上告人は、上告人に対し、
その同意を得ることなく総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限をそもそも有していなかったものというほかない。
そうすると、被上告人が上告人に対してその同意を得ることなくした本件配転命令につき、
被上告人が本件配転命令をする権限を有していたことを前提として、
その濫用に当たらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。