労働基準法公開日:2023年1月10日

【深堀り】東京高裁 製薬会社MRに事業場外みなしの適用認めず

外資系製薬会社で外勤の医療情報担当者(MR)として働いていた労働者が、残業代などの支払いを求めた裁判で、東京高等裁判所は事業場外みなし労働時間制の適用を認めない判決を下しました。

一審の東京地方裁判所は労働者の請求をすべて棄却

一審の東京地方裁判所は事業場外みなし制の適用は有効と判断し、労働者の請求をすべて棄却しました。

MRの業務は直行直帰が基本であり、具体的な訪問先やスケジュールも労働者に委ねられていたと指摘。
提出を指示されていた週報についても、内容は極めて軽易で、勤務状況を具体的に把握することは困難だったとしました。

二審もすべて棄却も、事業場外みなしの適用は認めず

二審の同高裁も引き続き労働者の請求をすべて棄却しました。

労働時間について、週報の内容や勤怠の打刻場所の大半が自宅であった点、在職中に時間外労働の申請をした実績がない点から、時間外労働に従事したとは認められないとしています。
他方で事業場外みなし制については、勤怠管理システム導入後の平成30年12月以降は労働時間を算定し難いときに当たらないとして、適用を認めませんでした。
同システム導入後は、月40時間を超える時間外労働に対して、事前申請させ、エリアマネージャーの具体的な指示のもとで業務に従事させており、所定労働時間内についても同様の運用が可能だったと指摘。
日報の提出や、週報の様式を変更すれば、業務内容や休憩時間を管理できたとしています。
仮に打刻した始業時刻や終業時刻の正確性に疑問があれば、貸与スマートフォンを使い、業務の遂行状況を随時報告させ、指示するのも可能だったとしました。