労働基準法 更新日:2023年4月10日

【2023年4月】賃金のデジタル通貨支払いが解禁されます

労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会は2022年10月26日、給与を「デジタルマネー」で支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令(労働基準法施行規則)改正案を了承し、2022年11月28日に労働基準法施行規則が改正・公布され、2023年4月に施行することとなりました。
【PDF】労働基準法施行規則の一部を改正する省令(令和4年11月28日厚生労働省令第158号)(厚生労働省)
この改正により労働者側の同意がある場合などに限って、企業側はデジタルマネーで賃金の支払いができるようになります。
今回の省令改正により、例えば「PayPay」「楽天ペイ」といったスマートフォン決済アプリ口座についても、 デジタルマネーとしての入金先として選択できるようになります。
資金移動業者へのデジタルマネーの支払いは労使協定を締結のうえ、労働者が希望して同意した場合に限ります。
現金化できないポイントや暗号資産(仮想通貨)での支払いは引き続き認められません。
  • ※資金移動業者とは、資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)に基づき、内閣総理大臣(財務局長に委任)の登録を受けて、銀行その他の金融機関以外の者で、為替取引を業として営む者。(2022年7月末時点:85事業者)
  • ※為替とは、為替手形、小切手、郵便為替、銀行振込など、現金以外の方法によって、金銭を決済する方法の 総称
利用できる資金移動業者は、厚生労働大臣の指定を受けたものに限り、賃金をデジタル通貨払いするときには、従業員から同意を得る必要があります。
また、同意を得るときには、資金移動業者が以下の要件に沿っているものであることを使用者が説明する必要があるとしています。
  • (1)賃金支払に係る口座残高の上限額を100万円以下に設定していることまたは100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。
  • (2)破綻などにより口座残高の受取が困難となったときに、従業員に口座残高の全額を速やかに弁済することができることを保証する仕組みを有していること。
  • (3)従業員の意に反する不正な為替取引その他の当該従業員の責めに帰すことができない理由により損失が生じたときに、その損失を補償する仕組みを有していること。
  • (4)最後に口座残高が変動した日から、少なくとも10年間は従業員が当該口座を利用できるための措置を講じていること。
  • (5)賃金支払に係る口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じていること。
    (6)ATMを利用すること等により、通貨で、1円単位で賃金の受取ができ、かつ、少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができる措置を講じていること。
【PDF】資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書(厚生労働省)

賃金のデジタル通貨払いは選択肢の一つであり、使用者にデジタル払いを強制するものではありません
なお、賃金のデジタル通貨払いは、使用者又は労働者側からの要請というよりは、キャッシュレス社会の実現に向けて、政府か策定した計画に盛り込まれ実行されたと私は認識しています
【PDF】・未来投資戦略 2018(平成30年6月15日)
※詳細は「未来投資戦略 2018 平成30年6月15日」(内閣官房)P136に記載
【PDF】・成長戦略フォローアップ(令和元年6月21日)
※詳細は「成長戦略フォローアップ 令和元年6月21日」(内閣官房)P105に記載
【PDF】・成長戦略フォローアップ(令和2年7月17日)
※上記は、「成長戦略フォローアップ 令和2年7月17日」(首相官邸)P116に記載
【PDF】賃金のデジタル払いが可能になります!(厚生労働省)

資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について(厚生労働省)